その他のお知らせ等
(一社)日本科学飼料協会または飼料関係業界からのお知らせ等があればこちらでお知らせする事があります。
月例研究会開催のお知らせ
第474回月例研究会を開催いたします。
演題:「アメリカミズアブの昆虫飼料化による持続的食糧生産」
概要:国連報告によると、2021年に世界の飢餓人口は8億2800万人に達した。中程度を超える食料不足者を含めると世界人口の約3割の約23億人となり、新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べ3億5000万人増加した。この世界的な食糧危機は、途上国ににおける人口増加だけでなく、気象変動による耕作地の喪失、ウクライナ危機など国家間の紛争の影響などもあり、今後数十年にわたり問題が深刻化するのは必至であり、食資源の確保は私たちが取り組まなければならない最重要課題である。 一方で、我が国を含めた先進国では経済的優位性により飽食状態にあり、「食品ロス」という言葉に象徴されるように、食糧生産から消費に至るまでの浪費(食資源のムダ使い)が顕在化している。食品産業や家庭から排出される生ゴミの多くが、焼却・埋め立てなど化石燃料を使った処分方法を取られており、少なからず温暖化の原因になっていることも問題である。また、農畜産業から排出されるさまざまな有機廃棄物(特に家畜糞尿など)の処理は時として環境問題に取り上げられることもある。 このような背景のもとで、従来技術では再利用が難しい有機廃棄物を処理し、食資源としてリサイクルする方法の一つとして、腐食性昆虫アメリカミズアブ(学名Hermetia illucens, 通称Black Soldier Fly; フェニックスワーム)が注目されている。本種は,新鮮な野菜果物だけでなく,腐敗した残渣(生ゴミや家畜糞尿を)も食べて成長し、他の生物種にはない類稀な環境適応能力と強力な増殖能力を併せもっている。成長した虫(幼虫やサナギ)はタンパク質と脂質に富み,養殖魚や養鶏等の飼料として有効である。さらに、本種の排泄物は消化の過程で有機物の分解が進んでおり、堆肥(有機肥料)として利用が可能であるため、ゴミゼロとなる廃棄物処理が期待できる "スーパー生物"といえる。 本種を用いた有機廃棄物リサイクルは、東南アジア諸国では温暖な気候がミズアブの増殖に適しており、人件費の低さもあって徐々に普及しつつあるが、欧米など先進国において社会実装するには解決すべき課題が残されている。リサイクルや家畜飼料等の法規制に関する課題のほか、リサイクルの事業主体となる自治体や民間企業が再処理施設のプラント化を達成し、事業性を確保するために解決しなければならない技術的課題もある。本発表では、本種の生物学的特徴と利用方法について基礎的な情報を提供するとともに、海外での事業化の事例を参考にしつつ、ミズアブのリサイクル技術を日本の社会システムに組み込むために必要なイノベーションについても言及したいと考えている。腐食性昆虫を用いた食資源循環の可能性を知っていただく機会になれば幸いである。
講師:霜田政美 氏 ( 東京大学大学大学院農生命科学研究科 教授)
演題:1)開発途上国でのアメリカミズアブ幼虫の養魚飼料適用事例
概要:1)ラオスのような開発途上国において、特に地方農村部の経済的に恵まれない農民にとっては、高価な養魚飼料の調達が地域の養魚振興の妨げとなっている。ハエ目ミズアブ科のアメリカミズアブ(Hermetia illucens)(以下BSF)幼虫は、家畜糞・果物残渣等を餌として比較的簡易な手法で飼育・増殖することが可能であり、地方部の貧困農民による実施が可能な小規模養魚にも十分に対応できる量を生産することができる。こうした背景から、ラオスの在来淡水魚のキノボリウオ(Anabas testudineus)の飼料タンパク源としてBSF幼虫を用い、その有効性を検証した事例を紹介する。 2)腸内細菌叢が宿主の体調等に大きく影響している点に関し、哺乳類ではこれまでにも広範な研究が行われ、疾病予防につながる重要な知見が得られている。一方魚類でも、近年腸内細菌叢に関する研究が進捗し、メタゲノム解析を通じた菌叢解析、機能性成分の産生ポテンシャルの予測等が顕著に進展している。現在我々は、複数種の海水魚・淡水魚にミズアブ粉を混入した飼料を与え、その後に生じる腸内細菌叢の変容および細菌叢による機能性成分の産生ポテンシャルの解析を行っており、いくつかの端緒的成果事例を紹介する。
講師:森岡伸介 氏 ( 人間環境大学 フィールド生態学科 教授)
開催日:令和5年1月31日(火)14:00〜16:00
開催方法:WEB開催(zoomのウエビナ―開催)
参加対象者:制限なし
参加費:2,000円(税含)*学生は無料
開催方法:WEB開催(zoomのウエビナ―開催)
参加対象者:制限なし
参加費:2,000円(税含)*学生は無料
申込期日は、1月20日(金)正午までとし、お支払いは、1月26日までにお願いします。
*なお、期日までにご入金が間にあわない場合は、事務局までご一報ください。
◆◇◆近年開催した月例研究会(pdfにて資料提供)◆◇◆
*資料の無断転載は、ご遠慮願います。転載される場合は、協会の許可を得てください。
- ●第473回 「牛乳房炎に対するプロバイオティクス飼料の有効性と抗乳房炎育種手法の開発」
(東北大教授)麻生 久 先生 - ●第472回 「日本飼養標準・肉用牛(2022年版)の改訂のポイント」
(京都大学 名誉教授)松井 徹 先生 - ●第471回 「ゲノム情報を用いたブタ育種についてー肉質から抗病性までー」
(農研機構 生物機能利用研究部門 生物素材開発研究領域長)美川 智 先生 - ●第470回 「畜産物のおいしさ評価、および飼料成分との関係について」
(農研機構 畜産研究部門 食肉用家畜研究領域 食肉品質グループ長)佐々木啓介 先生 - ●第469回 「畜産分野における温室効果 ガス排出削減を目指した研究開発」
(農研機構 畜産研究部門 乳牛精密管理研究領域 乳牛精密栄養管理グループ長)野中最子 先生 - ●第468回 「養豚場固有の腸内細菌叢と生産成績-腸内細菌叢網羅解析からみえてきた食物繊維の重要性-」
(株式会社栄養・病理学研究室代表取締役社長)塚原隆充 先生 - ●第467回 豚・家禽の飼料・栄養管理技術の向上を目指した試み
(国研)農研機構 畜産研究部門 村上 斎 先生